田中 勝 先生(応用数学科 情報数理)(理学研究科長)
1.田中先生の研究内容
私は現在、情報幾何と人工知能(AI)についての研究を行っています。
情報幾何とは確率分布を空間の一点と見なして、点と点の距離に基づいて統計を幾何学的に理解する分野です。次に人工知能についてですが、今の技術では、内発的な動機(好奇心)に基づいた行動はできません。今の技術でできるのは、人間が気づかない特徴であってもそれに気づき識別または判断するための支援技術です。人間は,創造的な仕事や最終的な判断を下すために,それを利用するわけです。そういった人間をサポートする知能拡大(IA)がここ10年程で伸びていくと思います。私はIA技術がどういう理屈で機能するのかを明確に,さらに効率的なシステムを構築できるようにするための基礎研究を行っています。
2.応用数学科の特色
応用数学科には、2つのコースがあります。1つは純粋に数学を研究するコース、もう1つは社会数理・情報インスティテュートといって、数学を用いて社会に対してどういった貢献ができるのか考え学ぶコースです。2つのコースが互いに関わりながら、数学を深く学んでいく環境を実現しています。また、ゼミばかりでなく数学総合などの少人数教育を実施し、1人1人に細やかな指導を行っている点も応用数学科の特徴ですね。
3.福大理学部の魅力
1つのキャンパスに多様な学科が集結している点が福岡大学ならではの魅力だと思います。さらに言うと、数学科、物理科学科、化学科、地球圏科学とこんなにも充実した理学部はめったにないと思いますよ。様々な分野の先生から、キャンパスを移動することなく学べることが学生にとって、武器になるはずです。
4.今後の福大理学部をどのように展開していきたいか
大学院の充実のための学部の充実ですね。何も研究職を目指すために院に行くのではなく学部のころに学んだ内容をもう少し専門的に学び、一般企業へ就職した際にも理屈のわかる社会人として活躍できるように、また,自分の視野を広げるためにも院に進んでほしいですね。また、理科や数学の教員免許では、大学院まで行くと専修免許を取得でき、様々なメリットがあります。進路の選択肢の一つとして大学院を学部の学生にもっと考えてほしいです。理学部として言うと、これだけの学科を抱えた理学部はなかなかよそには無いので、そういう面も力にして発展させていきたいですね。
5.同窓生とのつながりをどのように在学生に活かしたいか
在学生の皆さんは、卒業された先輩方が今どういう風に過ごされているのか気になっています。また逆も然り、卒業された先輩方は現在の福大生が何について勉強しているのか、どのようなキャンパスライフを送っているのかが気になっていることと思います。そのようなことに限らずもっとお互いに情報交換をしていけたらいいなと思います。大学周りの景観も昔と変わったところも多々ありますし、そういうのも伝えていけたらいいですね。
6.大学時代の自分
学生の頃、私は物理学を専攻しており、主に素粒子理論について勉強していました。その後国立研究所に就職して脳科学の研究を行い、埼玉大学工学部にて情報科学を教えたあと、福岡大学に来て今に至ります。振り返ってみると最初は物理を学んでいたのが、次第に工学寄りになり、現在は数学について研究している形になりますね。
7.同窓生に一言
福岡大学に来てよかった!素敵な4年間だった!と思えるように、また、より良い成長を皆さんが実感できるように精一杯頑張っていきます。暖かく見守っていてください。
8.高校生に一言
最近の若い人の中に、積極的な受け身の姿勢になっている人が多く見られるように感じます。何かを学ぶときに,さあ教えてくれという姿勢ではなく,自分から積極的に調べたり,質問したりすることが,これからの時代はもっと求められます。福岡大学理学部には様々な学科があり、学科を超えて自分を高めるために知識の幅を広げることが望めばできる環境がすでにあります。なので、「知りたい、学びたい」という探究心をもち、自分から実際に調べたり勉強したりできる、そういう人が福岡大学理学部へ来たら、よその大学では得られないような多くの知識と経験が得られると思いますよ。将来何になりたいのかまだよくわかっていない方でも、いろんな分野のある理学部で自分の好きなこと、得意なことを見つけるチャンスにもなりますので、是非いらしてくださいね。